ニュージーランドの小学校で、この2月に始まった新学期から、National Standardsと呼ばれる新しいシステムが導入されたことを、ご存知ですか?
National Standardsは、学習到達度を測るための国の定めた基準値です。
英語(Literacy)と算数(Numeracy)について、Year 0(5歳)からYear 8(13歳)までそれぞれの学年で期待される到達度レベルが示され、子どもたちは、基準に沿ったテストを受けて到達度を測られます。
その結果は、親に通知されることになっています。
私は、個人的に、このシステムの導入を危惧しています。
私たちの子どもたちのように、英語が第一言語でない子どもに不利に働くケースが多く出てくるのではないか、と思っているからです。
家庭で日本語を話している場合、学校に入学した最初の2-3年に関しては、英語はどうしても遅れ気味になります。同じように一年間学習しても、それでネイティブの子が求められるレベルに到達するケースは、子どもにも因りますが、おそらく、多数派ではありません。
政府は、ESOL対象の子どもたちに関してはThe English Language Learning Progressions という
別の基準を使う、と言っていますが、この基準からNational Standardsへ基準を切り替えるタイミングは、
学校に一任する、とされています。
ニュージーランドには、英語を第一言語としないこどもたちに英語の取り出し授業をするESOL(English for Speakers of Other Language)というシステムがあります。このブログを読んで下さっている方々のお子さんにも、このESOLを受けた方は、多くいらっしゃるのではないでしょうか。
ところが、このESOLの運用は、学校や教師の裁量に任されている部分が大きいため、運用の状況に大きなばらつきがあります。まあ早い話が、ESOL対象の子は、こっちの学校に行けばすぐにESOLを受けられるけど、あっちの学校に行っちゃったらなかなか受けさせてもらえない、なんてことになってるわけです。
うちの息子は、最初に入った学校では、半年間の間、結局ESOLを受けさえてもらえませんでした。ESOLを必要とする子どもの数が多く、順番が回って来なかったのです。今の学校は、転校手続きをした直後に教育省に連絡を取り、息子のためのESOLの予算を確保して、待っていてくれました。最初の学校での半年間は、彼の今までの人生の中で、最も辛い時期だった、と、最近になってやっと、本人が言ってくれるようになりました。
現状のESOLさえ公平に働いていない状況で、National Standardsの導入により、更に学校やクラス担任の裁量に任せる部分が大きくなってしまうことに、私は不安を禁じえません。子どもたちの英語のレベルを見誤り、間違った基準で判断したり、その結果、成績が取れないことで子どもたちに劣等感を抱かせてしまったり、といったケースが出てくるのではないでしょうか。
5歳で学校に入った後の2-3年間、ESOLの子どもたちに必要なのは、
「不自由な言葉で話しても、だれも自分のことを笑わない」
という環境です。その環境に身を置くことで、徐々に英語への自信を深め、友達と関わることで少しずつ言葉を確保してゆくのです。
テストで評価されるようになったとき、子どもたちは、特に英語環境に入りたての5-6歳の子どもたちは、果たして、「だれも自分のことを笑わない」環境に身を置いておけるのでしょうか。
また、同じESOL対象の子どもでも、母語がフランス語やスペイン語の子と、日本語や韓国語などが母語の子とでは、母語と英語との距離の差から英語の伸びに大きな開きがあるのが普通です。
The English Language Learning Progressionsは、英語が母語でない子の第二言語としての英語の発達を数値化し階層化したガイドラインです。でも、このガイドラインは、そういったところまで考慮してくれるのでしょうか?
「この間までいたフランス人の子は、2年でこのくらい伸びたわ。お宅のお子さんは、ちょっと伸びが遅いわね」
というのは、世界中の日本語が母語の親子によく浴びせられる誤解だということを、一体何人の教師が知っているのでしょうか。
子どもひとりひとりのバックグラウンドを無視して共通の基準値を持ち込み、それで子どもたちの能力を測る、という試みは、私にはいささか乱暴に思えます。せっかくのニュージーランドの「個を見る教育」の良さが失われてしまうような気がしてなりません。
もう一つ、とても危惧していることは、このテストの導入が子どもたちに対して英語のプレッシャーを与えかねない、ということです。
子どもたちは、National Standardsの内容に沿ったテストを受け、到達度を測られます。結果は学校の評判を大きく左右するでしょう。ESOL対象の子どもたちの英語の成績が振るわなかった場合、学校側が成績(評判)を上げるために
「日本語ではなく、家庭でも英語を」
という論調を再度、復活させてくるような気がするのです。
しかし、ESOL対象の子どもたちの英語の力を伸ばすために必要なのは、10歳くらいまで母語の力を年齢相応に保つことです。そのことが結局、将来の英語力や理解力、思考力に影響してくる、という説が、現在の主流です。ですから、5歳、6歳、といった、まだまだ母語が未完成な段階で第二言語としての英語力を測る、という考え方は、母語維持の観点からみると、とても危険なのです。母語が未完成な子どもたちに不必要な英語のプレッシャーをかけ、その結果ますます、将来の英語力がしぼむ、という結果になりかねないのです。
National Standardsに対する反対署名活動を行っている団体が二団体あります。
ひとつは、ウェリントンの任意団体。
もうひとつは、hands Up for Learningという団体です。興味のある方は、このブログにコメントを残して下さい。コメントは、私承認なしには公開されない設定になっています。コメントを頂いた方には、追ってこちらからご連絡差し上げます。
私は、今月の保護者面談で、自分の息子に対するNational Standardsの適応を、彼がY5(10歳)になるまで待ってもらうよう、学校と交渉するつもりです。















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